令和2年度 定例理事会報告書

一般社団法人 高等教育国際基準協会理事会報告

 

令和2年9月19日オンライン実施

 

テーマ:

「コロナ禍における大学高等教育のあり方、オンラインの可能性、および日本と他国のオンライン教育の取り組みの違い」について

 

 

4月の緊急事態宣言下において、各大学は休校を余儀なくされ、これまでの授業形態を急遽見直さざるを得ない状況となった。

各大学では、夫々がオンライン授業を取り入れ、新しい形式での授業が開始され、試行錯誤しながら、後期を迎えている。

高等教育国際基準協会として、現在の状況の確認、問題点、利点について、各理事における意見交換を行い、ここに協会としての提言を取りまとめたい。

 

 

1.コロナ禍における各大学の取り組み、実施状況について

・近畿大学総合社会学部の場合

前期は全てZoomを使ったオンライン授業実施。

英語の場合90分のうち30分は講義、その後基本的に自由な取り組みとして、ブレイクアウトルームによる議論を実施し、課題を与える。後期は対面授業(通学)が再開予定。(平均3%程度の講義が対面)。

対面授業を実施しても、出席を強要できない。つまり、通学しない学生のためのオンデマンド講義を別に収録する必要がある。しかし、個人情報の観点から、対面授業を録画することは難しく、別途収録している。

 

・岡山医療専門職大学の場合:

前期の担当授業は授業を全て対面(通学)で実施。

学生自身も感染予防意識が高い。

教養系の授業ではソーシャルディスタンスを保てている。

教員には大学からオンライン授業に関する研修が実施された。

 

・中国学園大学の場合:

後期の担当授業は全て対面(通学)授業の予定。

 

・摂南大学の場合:

日本人留学生を日本に帰国させた。その際に、インドネシアでは日本より早くオンライン授業が始まっていたことを知った。

 

・広島大学の場合:

教員により様々だが、ほとんどがZoomにより授業を行っている(大学院生対象授業の場合)。

4月入国予定の研究生の入国が10月も再開されていない。

オンライン(スカイプ)で中国にいる研究生とやり取りを実施。オンラインは以前から使用しているので問題なく、便利だと感じている。

対面(通学)が必要だと判断する場面を考慮しながら、授業を実施したい。

 

・岡山大学 大学院(医歯薬学総合研究科、脳神経内科学)の場合:

3月から6月まで学生は学内立ち入り禁止になり、医学部学生から猛反発があった。

特に大学院生は動物実験をしており餌を与えられないと今までの実験が台無しなるという問題があった。皆で申立てをして、餌やりやデータを取るということに限定して立ち入りが許可された。

 

・岡山大学医学部の場合:

4年生までは座学による講義を実施(ティームズ利用)。一学年約100名なので、学生も顔を映しながら教官と勉強するという今までと変わりないやり取りだった。

5.6年生の病院実習が立ち入り禁止の期間中は実施できず、7月頃から解禁されたが、外来実習は今も参加できていない。

実際の患者さんを診る経験を得るための大事な実習であるが、実施できない状況が続く。特に実習面における教育が不十分にならざるをえない現在の状況である。

また中国人留学生がアメリカへ留学ができない、入学試験を受けて合格した中国人留学生もまだ日本へ入国できずにいるなど、留学生に影響が出ている。

 

・大阪府立大学の場合:

前期は全面的にオンライン授業、共通基礎教育について、理系の場合実験科目は一部対面授業を実施。

英語の場合、リーディングは毎回課題を出し提出させる。リスニングはオンラインでネイティブの講義を聞き、ワークシートにキーワードを穴埋め式で記入という授業を行っていた。授業は、テンポ速く進んだ。

Zoomで授業動画を作り、学内の授業支援システムにアップし、学生がそれを見て、ダウンロードした課題を提出するというやり方をしていた。

学校側から動画の容量が大きくて困るとの連絡があり、動画をやめて解説のプリントに切り替えた。前期はそれらの準備がかなり負担であった。

後期は徐々に登校も始まり、英語について後期はプレゼンテーションなどアウトプットが主な為、クラスを半分に分けて対面授業を行う予定。大教室を使い学生の間の距離を取る形にしている。

 

 

2.良い点について

・数学授業実施においては対面形式とオンライン実施形式における差異は感じない。

・オンライン活用について考える良い機会となり、有意義であった。

・ブレイクアウトルームを使うと、みんなの顔が同時に見られるという利点がある。特に遠方の学生や社会人にとって、教育の質が保たれるのであればオンラインの方がむしろ良いのでは。

・オンライン教育を積極的に導入していると、学生集めにプラスになるのではないか。

・ミシガン大学などでも半年間通学して、残り一年半はオンラインでやり取りし論文を提出すれば修士を取ることができた。このことから、オンライン教育の利点がうかがえる。

・オンラインで学生に課題を提出すると比較的熱心に勉強し、出席率も通常より良い。

 

 

3.問題点について

・オンラインで学生の顔出しを強要できない。ディスカッションやゼミを除く、講義にて学生の顔が見えないため、理解度が分からず、コミュニケーションが取りづらい。

・インターネット接続状況や通話が不安定なことがある。

・図書館使用ができないため、事前に資料や文献を読んでもらってからの授業実施ができない。

・大人数の授業の場合、距離を保てる教室の確保が難しい。

・感染を心配して登校したくない学生がいる場合の対応について考える必要がある。

・対面ができないことを補うための課題が多すぎるという学生の声がある。

・真面目な学生ほど悲鳴をあげている。今までも宿題や課題は出されていたが、多すぎるという意見は以前にはなかったので、今回はより多かったのではないかと考える。

・教員側も、毎週課題を出し、チェックとフィードバックが大変な負担となる。

・成績が同じになってしまう。一部の学生は課題をやってこない場合があるが、ほとんどの学生はきちんとやってくるため、成績の差がつけにくい。

・オンラインでの授業においては、カンニング的なものがないかどうか、例えばウィキペディアから引用しているなど、疑わしい場合がある。

・英語のライティング課題においても妙に英語が上手いと感じることもある。つまり、ネット上の英語をそのままコピーしている可能性がある。

・英語教育におけるオンライン授業は、特にアウトプットにおいては非常に課題がある。

・理系の場合、実験や実習といった科目がオンラインではできない。

・医学部生の病院実習では回診前のカンファレンスにも出られず。学生は患者に近づくことができない。本当に教育になっているのか疑問に思う。この点は高等教育における理科系の実習が必要な分野ならではの不利なところである。

・留学生に対する配慮がなされていない。受け入れる留学生、日本人留学生の問題がある。本当に勉強したいという学生を送り出せない。

・ポストコロナには海外との交流が全くなくなるということは考えられないが、今の状況をどうするのか、できるだけ早い対応が重要である。

 

 

4.今後の提案について

・オンライン授業の課題の在り方を再考する必要がある。

演習・実習系の一単位は45時間(1.5×15×2)の学習内容という定義があり、見合わないそれ以上の課題を出しているのであれば多すぎるのは分かる。だが今までは宿題も出さず授業を受けるだけで単位を出していたのであれば、学生は急に課題が増えたと思うのではないか。定義に戻ったのではないか。

また学生が授業を取り過ぎていたという問題があらわれたのかもしれない。教員全員が課題を出した時に学生がどうなるかを考慮するべきである。その意味では、教員間のコミュニケーションで調整することも必要となる。

・オンライン授業においては新しい成績評価の方法も考えなければならない。

通常の筆記試験はオンラインでは実施しにくい。毎回課題を無理のない程度に出して、チェックし、成績に反映させる方向が望ましい。

・新規留学生に対しどうやって質の高い、効率のよい授業を提供できるかは大きな課題である。

今後の18歳人口減少時代を迎え、どう留学生を受け入れるかも、同時に考える必要がある。

広島大学は中国の約100の大学と提携している。しばらく日本へ来られない留学生にはZoomによる授業参加だけでなく、中国国内の協定校に通学してもらうのはどうか。Zoom授業だけでは限界があるからである。対面授業の効果は看過できない。

留学生は単に語学知識を身につけるだけでなく、日本の文化、社会性、国民性を知ることも重要である。

現在中国国内の大学に日本人教授が多数在籍している、広島大学に入学が決定している留学生には協定校に入学してもらうのはどうか。協定校への通学とオンラインの併用でもよい。今こそ協定校の役割を果たしてほしい。

また広島大学が授業料を減額せずに徴収していることは疑問である。

・留学生が日本に入国してから14日間ステイする場所を作ってはどうか。オリンピック会場を利用するなど。

・各大学が留学生受け入れについて悩んでいる。文科省が音頭を取り、入り口でのチェックを行う体制を作った方がよい。

・PCR検査を行えば、日本の学生と同じようにできる。日本に来てもらうことが重要である。いかに日本に入れるかという政策を考えた方がよい。

・現場なくして医者の教育はありえない。コロナ対策をしながら実際の患者さんに触れなければならない。バーチャル医師というのは存在しない、生の現場で鍛えていく必要がある。その工夫をしなければならない。

・ただでさえ医学部生の質は低下しているが、ますます低下するのではないかと心配している。教育がうまくできないと医師国家試験の合格率が来年、再来年は下がるのではないかと危惧している。

・生の現場に接しなければいけないという言葉は様々な学問分野においても同じことが言え、大変重要である。

・一方でコロナ禍での特別な対応でなく、やはり積極的に遠隔授業は進めるべきである。オンラインの良さも取り入れながら教育について考える必要がある。

 

 

5. 国に対する提言

理事会における以上の議論を踏まえ、次の3点を提言したいと考えます。

 

提言1:政府はコロナ禍に対する様々な取り組みを行った大学に補助金を支給するべきである。

 

コロナ禍において、3密を避けることが重要になっているのが大学という高等教育機関であり、特に1年生(新入生)は、少なくとも2020年前期は大学のキャンパスに入れず、大学の施設が自由に使用できない、サークル活動がない、あるいは制限されている、友達作りが極めて難しいなど、かなりの不便や困難が生じています。

講義形式がオンラインライブやオンデマンドなど、遠隔授業が主流で後期は対面授業が増えたとはいえ(全授業の2%~10%程度)、現在の教育は通信教育と変わらない状況であることから、文系私学の場合は、年間約120万円の授業料を納める価値がないものと考えられる。通信教育であれば年間20万円程度である。

1年生のみならず、全学年の学生に対し、来年度の授業料を大幅に軽減する、または学生に対し何らかの金銭的援助やサービスを提供すべき、深刻な状況であると考えます。

そこで、大学の上記の事態への対応状況、その積極性やサービス内容、サービス額などに応じ、Go to TravelやGo to Eatの制度に習い、Go to Learnのような補助金を、大学側に支給すべきであると考えます。

 

 

提言2:文部科学省は1単位に対する学習量の見直しを検討すべきである。

 

現在、演習・実習系科目は1単位45時間(専門科目は2単位)となっており、これは、現状に合わないものと考えられます。このことが、オンライン授業における課題の多さを学生が感じるということで、明確化しました。

例えば、月曜日に3コマ(4.5時間)を履修する学生は、同じ4.5時間を自宅学習する必要性があることになりますが、これは現実的ではないと判断できます。日本の大学の実情が、就職予備校的な役割を果たしている現状、海外の状況とは切り離して、日本独自の方式を考える必要があるのではないかと考えます。

先ほどの例では、4.5時間の大学での授業に対し、自宅学習は3時間(現行の3分の2)という実行可能な時間量にすべきではないかと考えます。時間を減らすことで、全体の教育の質が落ちるとは考えられません。重要なのは、現在、現行の時間量がほとんど守られていない現状があることです。実行可能な時間設定で、より質の高い教育ができるものと確信します。

 

 

提言3:今こそ留学生に対する教育の充実を図るチャンスと捉えるべきである。

 

理事会でも活発に議論されたように、高等教育では留学生がコロナ禍で最も大きな悪影響を受けていると言っても過言ではありません。

本国と留学先との自由な行き来が難しい中にあって、協定校との連携、オンライン授業の充実、留学生に対する様々なサービスや財政的援助など、考えられる対処策は枚挙にいとまがありません。

政府・文科省でも留学生教育改善プロジェクトを立ち上げるなど、積極的に問題解決へと一歩コマを進めるべきではないだろうかと考えます。

 

 

石井隆之

高等教育国際基準協会代表理事

近畿大学総合社会学部教授

 

次回 定例役員総会のお知らせ

詳細につきましては決定次第会報にて通知します。